前書き その一
前書き その一
九〇年代のはじめ(たしか一九九二年だったと思うが、楽しいときのことは案外覚えていないものだ)、私はほぼ全員が作家からなるロックバンドに参加した。
バンド名はロック・ボトム・リメインダーズといって、サンフランシスコの出版社の広報担当者であり音楽者のキャシー・カーメン・ゴールドマークの提言から生まれた。
メンバーはリードギターのデイブ・バリー、ベースのリドリー・ピアスン、キーボードのバーバラ・キングソルヴァー、マンドリンのロバート・フルガム。
そしてリズムギターの私。
たいていはそこにキャシー、タッド・バーチィムス、エイミ・タンというヂィキシー・カップスもどきの女性トリオが加わっている。
元々は一回こっきりの企画で、ABCのブックフェアの余興にツー・ステージ演奏し、無駄に過ごした青春を数時間にわたって取り戻し、物笑いの種になって、それで解散となる運びになるはずだった。