履歴書 5(書くことについて)

キング・スティヴン『書くことについて』


履歴書

アルコールの臭いが鼻をつき、医師が消毒器の蓋をあける音がした。
ちらっと見たとき、医師は手に針を持っていた。
筆箱のなかに入っている定規くらいの長さの針だ。
私は身をこわばらせた。
医師はわざとらしく微笑んで、噓をついた(そんな噓をついた医師は即座に投獄すべきだ。相手が子供であれば、刑期を倍にすべきだ)。
「楽にして、スティーヴィー。ぜんぜん痛くないからね」私はその言葉を信じた。


参照

キング・スティヴン『書くことについて』2013年 小学館文庫 978-4-09-408764-2

King, Stephen "On Writing" 2010/3/11 Hodder & Stoughton