履歴書(書くことについて)

キング・スティヴン『書くことについて』


履歴書

もしかしたら、私が二歳で、兄のデイヴィッドが四歳の時に莫大な借金をして行方をくらました父を追いかけていたのかもしれない。
だとしても、結局見つけだすことはできなかった。
私の母ネリー・ルース・ピルズベリー・キングは時代に先駆けて自立した女性のひとりだが、好き好んでそうなったわけではない。
メアリー・カ―が描きだす子供のころは、パンのラマのように見晴らしがいい。
私の子供ころは霧に覆われていて、記憶はそこから隔離された樹のようにときおり顔を出し、私をとって食おうとしているかのように思えた。
以下はそのようない記憶の断片と、それよりは多少なりとも脈絡のある少年期から青年期にかけてのスナップショットの寄せ集めである。