前書き その一
だが、そうはならず、グループは解散しなかった。
あまりに楽しすぎて、やめられなかったのだ。
のちにサックスとドラムスのプロが加わったこともあり(初期のころには、われわれが音楽の師と仰ぐアル・クーパーもいた)、演奏はなかなかのものだった。
金をとれるレベルといってもいい。
もちろんたいした額ではない。
U2やEストリート・バンドではなく、街道ぞいの、ナイトクラブのお抱えバンドのギャラ程度だ。
ツアーもしたし、そのことを本にも書いた。
私の妻は写真撮り、気が向けば(たいていはいつも)踊っていた。
グループはロック・ボトム・リメインダーズとかレイモンド・バーズ・レッグズとかいう名前で今も続いている。
メンバーには若干の変動があり、キーボードはバーバラからコラムニストのミッチ・アルボムに変わり、アルはキャシーとそりがあわずにグループを去ったが、それ以外は、キャシー、エイミ、リドリー、デイヴ、ミッチ、私、それにドラムスのジョッシュ・デリー、サックスのエラズモ・パオロと全員が残っている。
もちろん、それは音楽のためだが、同時に、仲間どうしの交流のためでもある。
おたがい気心が知れているので、おりに触れて仕事(みんなからやめないようにと言われている本業)の話をするのは楽しい。
当然のことながら、内々の話で、どこからか想を得るのかなどといった質問は出ない。
そんなことは誰もわかっていないのだから。